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2014年3月 6日 (木)

第79話:【美緒と董馬】~その19

★第78話はコチラ

美緒は高校に進学すると、何人ものオトコと関係を持った。美緒の行為を咎める者は誰も居なかった。同じ屋根の下で暮らしている両親でさえも気付かなかった。美緒は街に繰り出した。調布にある自宅から、少しだけ足を伸ばせば、そこには美緒の願望を満たすことのできる妖艶な街があった。

美緒は、けっして大人びた自分を見せようとはしなかった。濃いめのメイクを施したり、ノリの良い小洒落たファッションを纏うこともしなかった。十七歳の自分、高校生という小粒の自分を全面に押し出した格好で街を歩いた。それは、どことなく素朴で、無垢で、すがすがしく、洗練された少女の気配が漂うものだった。美緒は完璧な少女を演じた。 繁華街をぶらつく行為を繰り返していると、そのうち美緒に声をかけてくるオトコが姿を現すようになった。

さいしょのオトコは、ミチルと言った。ミチルは二十歳で、都内にある私立大学に通う大学生だった。ミチルにはカノジョが居た。美緒は、それでもいいとミチルに言った。ミチルは歓喜し、野良犬が餌を貪るように、美緒のカラダをしゃぶり尽くした。セックスのあとに、ミチルが、カノジョと別れるから俺と付き合おう、と言ってきた。美緒は、いいよ、と返事をした。ミチルは灰皿で煙草をもみ消し、美緒を抱きしめた。

ミチルとセックスした日、美緒は帰宅し、姿鏡の前でピアスの穴をひとつ開けた。「ミチルの穴」と名付けた。両親にピアスを開けたことを正直に告白した。両親は何も言わなかった。

ミチルは、会えば必ずカラダを求めてきた。美緒は、ミチルの求めにはすべて応じた。ミチルに交際を宣言されて、三週間ほど経ったとき、ミチルのカノジョと名乗る女が、ミチルのアパートに駆け込んできた。美緒とミチルは一緒にシーツにくるまっていた。ミチルのカノジョが、ミチルに殴りかかった。美緒は慌てなかった。ミチルの寝室からスルリと抜け出すと、ゆっくりとした動作で下着を身につけ、ワンピースを着た。白いワンピースはミチルの趣味だった。玄関でパンプスを履き、じゃあね、ともサヨナラとも言わずにミチルのアパートを出た。そして煙草に火を点けた。煙草の煙が美緒の横っ面を通り過ぎてゆく。

ミチルと別れたあとに、美緒は数ヶ月ごとの間隔で、寄り添うオトコを変えた。繁華街で、美緒の無垢な装いは、かえって目立つ結果となった。美緒には「少女」を演じることに独特の才能があった。少女好きのオトコが美緒の元に集まった。結果、美緒の元には新しいオトコが絶えず、美緒の性器は潤ったままだった。

 

たくさんのオトコと寝たが、自分のことを「好きだ」と言ってくれるオトコと寝たときだけ、美緒はピアスの穴を開けることにした。そのオトコが、美緒のことを本気で好きでいてくれるかどうかは、問題ではなかった。レンアイには言葉があればいい。言葉だけがあればいい。それがカラダの関係を超越したレンアイの真の姿だと思っていた。

教師に貞操を破られた日、美緒のカラダは、オトコの温もりから愛を得ることは間違いだと悟った。カラダは快楽の追及の為だけに存在する。カラダに必然性と運命的なものを持たせてはいけない。信じられるものは言葉だけだった。

その日は、二つ目のピアスを開けるつもりだった。オトコの元にメールを打った。学校が終わったら、落ち合う予定だった。繁華街で出会い、何度かデートを重ねたオトコだった。オトコは社会人で、大学を卒業し真面目に働いていた。いつものオトコたちと違い、そのオトコは、初めて会った合コンの席で、美緒に誠実な態度で接してくれた。シャイなオトコだった。美緒は、好感を持って、そのオトコに接した。

今日こそ「好きだ」と言われたい。もし相手から言われなくても、自分から「好きだ」と言ってみようか、とでさえ美緒は考えていた。

メールの返事が来た。本文には『友達の友達から聞いたけど、美緒ちゃんってサイテーな女なんだね。もう会えないです。ごめんんさい』と書かれていた。

美緒は絶句した。そして自分の素行を、はじめて恨んだ。自分が今までオトコを漁り、尻軽な女に落ちぶれてしまっていたことを、このときはじめて気付いた。自分はうまく立ち回っていたつもりでも、享楽とゴシップに彩られた繁華街では、目立つ人間はすぐに絞り上げられる。美緒は街の風評に我が身をえぐられた。

山手線の電車の中で、美緒はそのメールを読んだ。押しくらまんじゅうのような肉厚に挟まれ、車内にあふれた湿気を帯びた体臭に、喉に穴が開きそうなほどむせ返った。労働者の群れに飲まれたまま、美緒は車窓から薄ぼけた梅雨空を見つめた。

光が届かない街の風景を眺め、美緒は「死のう」と思った。そう覚悟を決めた途端に、急に下半身が熱くなった。いつも姿鏡の前で繰り広げる痴態を生じさせる悦楽を求める性癖が、むくむくと沸いてきた。美緒は制服の上から、自分の内股を押さえた。

カラダの疼きを必死に押さえていると、美緒は、場違いなオトコを見つけた。満員電車の中だった。オトコは雨雲が拡がる空を見つめ、泣いていた。柊木董馬だった。

(第80話はコチラ)

 

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