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2013年5月16日 (木)

第25話:【史佳】~その5

★第24話はコチラ

六限目終了のチャイムが鳴った。今日は終礼のホームルームはなかった。生徒たちがガヤガヤと騒ぎ出す。ある者は部活動に行くために、足早に教室を出て行く。いちばん動きが俊敏だったのは野球部に所属してる男子生徒だった。やっぱり新一年生は、先輩より早くグラウンドに行かないといけないのかな、と史佳は、坊主頭の男子生徒たちを、物憂げな視線で見つめた。

黒板には、たくさんの数式が列を為して書かれていた。今日の当番に割り当てられてる女生徒が波動を描くように黒板消しで数式を消し始めた。粉になったチョークが空中を飛散してた。
窓の外は、新緑のみずみずしい輝きが、風とうららかな陽気にほぐされて、反射するほどの色差を見せていた。

教室に愛実が入ってきた。史佳と愛実は別々のクラスだった。小学校から同じ学校に通い、家が近所ということもあって、二人はごく自然に仲の良い友だちになっていた。史佳には親友と呼べる相手は、愛実しかおらず、それは愛実にとっても同じことが言えた。

「ふみか聞いたよ」
愛実が、口角をめいっぱい上げて太陽のような笑みを浮かべて小走りで、荷物を持って立ち上がった史佳に近付いてきた。

「オーディションを受けろって言われたんだって? すごいじゃん!」
愛実が、胸の前で両手を合わせて、拝むような仕草を見せた。
「みんな、冷やかしてるだけだよ。ジョークだよジョーク」
「でも、ショートカットが似合うって言われたんでしょ? やっぱりなぁ。私もふみかのショートカットすごい似合うと思う! 賛成! オーディジョンに賛成!」

愛実が弾けるように笑って言った。あまりにも大きな声だったようで、教室に残っている他の生徒たちも、何事かと史佳たちを振り向いた。
「ちょっと…愛実、声が大きいって! それに、私そんな話は本気にしてないんだから」
史佳は、口元に人差し指をあてて、シー! と愛実の暴走を食い止めた。

史佳は、自分が可愛いとか、美人だとか、そんなことは露にも思っていない。ひょっとしたら外見は美人な方かもしれない。だけど、自分は性格がひねくれてる。それが嫌だった。

人が幸せそうに笑ってる姿を見たり、仲睦まじい男女を見ると「別れればいいのに」と思ってしまう自分がいた。
ふと、今朝観たテレビの大物芸能人が破局したというニュースが、史佳の脳裏に思い出された。あのニュースを観て、史佳はひとりで笑った。鼻で笑った。笑ったあとに自己嫌悪に陥る。いつものことだった。

― 私は性格ブスだ ―

そんなことは分かってる。何が原因で、こんな卑屈な性格になったのかは分からない。
ひょっとすると生まれつきなのかな?
私は生まれつき性格が悪いのかな? 
こんなデメリットも遺伝されるんだよね。
生きていく上で、この遺伝が必要、この遺伝が不必要なんて、生まれてくる者は選べないのかな?

髪型を変えても、本当の自分は変わらないよね

「なぁに?」
愛実が小首をかしげる。長い髪が肩口から滑り落ちた。
「ううん、なんでもないよ。ねぇ明日、学校終わったらアウトレット行かない?」
史佳が、そう提案すると、愛実は「いいよ、行こう」とうなずいた。

いつの間にか数式は消去され、黒板は元のざらついた光沢を放っていた。

(第26話へ続く)

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