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2013年4月 6日 (土)

プロローグ【史佳】

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いつもそうだった。

テストの成績は真ん中くらい。平均的に見たら中の下くらい。友だちの数もみんなと同じくらい。授業を受けて眠くなるタイミングもみんなと同じくらい。放課後にただおしゃべりをするだけで集まる近所のマック。「そろそろ帰ろうか」と思い始めるタイミングもみんなと同じくらい。至ってフツー。フツーだけが「取り柄のにんげん。そう思い込むことが、自分の中で救われているし、つまんないとも思う。

「ふみか、ちょっと知ってる?」

放課後、今日は寄り道をしないで、まっすぐに家に帰ろうと校門を出たところで、背後から愛実に肩を掴まれた。史佳は鞄の中からiPodのイヤホンコードを引っ張り出したところだった。オレンジ色のコードを手のひらに握ったまま「知らなーい」と答えて笑った。
愛実は、史佳の横に並ぶと、そろって歩き出した。史佳は駅へ向かっていた。

「山下先輩、また彼女ができたんだって」
「うそ!早くない?」
「チョー早いよ。だって別れたって聞いたの先週の金曜日だよ。まだ三日しか経ってないし」

愛実は、史佳に耳打ちするようにヒソヒソと声を潜めて話し出した。でも口調の端々がお花畑のようにきらめいて、春爛漫と言った感じだった。愛実のおしゃべりは止まらない。

「でも、今度できた新しい彼女って、別れた彼女の友だちらしいよ」
「それって…」
「うん。だからほら、友だちから友だちに乗り換えたって感じがするでしょ?」
「するする」
「結局それが原因で、先輩の彼女、他の女友だちから絶交喰らったんだって。えげつないよねー」

いつの間にか、愛実のゴシップトークは、ヒソヒソ話の領域を軽く飛び越えて、いつもの声量に戻っていた。史佳は、そんな天真爛漫で自然とテンションが上がる愛実の性格を羨ましいと思った。

そして史佳は、山下先輩や、その周囲を取り巻く人たちの素行が不思議でしょうがなかった。
付き合ってた彼女と別れて、今度はその彼女の友だちと付き合う。
これって、簡単に言えば、身内で固められた小さな世界で、お互いが奪い合ってるのと同じじゃないのか。
友だちの友だちと付き合う。別れたらまたその友だち。その血縁無き執拗な集合体への依存が、ズルズルと身体を引きずる蛇のようで気持ちが悪かった。

これって、近親相姦と同じじゃない?
共食いでしょ?
「ともだち」っていう名の巣の中で。


最終的に、友だちの友だちたちに相手にされなくなったら、自分の兄妹たちにも手を出すハメになるんじゃないか、なんて気味の悪い想像をしてみる。史佳は、首筋と前腕にぶるぶると鳥肌が立った。
でも、どっちにしても私には関係のない、縁のない話だと史佳は思った。
恋とか、付き合うとかよく分からない。身の程はわきまえてるつもりだ。

みんなと同じような顔をして笑ってるけど、いつも突拍子もない偏屈を考えてしまう。
史佳は、いつも深く考えてみたかった。だけど、私はどこにでもいる女子高生だから、という強迫染みた自己完結で、感情と思考を抑えてみた。
私はフツーに暮らすしかないんだ。思って唇を噛みしめた。

綾野史佳。15歳の春のことだった。

(第1話へ続く)

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コメント

プロローグ読ませて頂きました!!

どんどん吸い込まれて行きます。

楽しみにしてます!

ありがとうございます!

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